
休山 昭Akira Kyuyama
株式会社アクタス
取締役会長
1961年生まれ。神戸市出身。
1985年株式会社アクタス入社し、神戸・六甲店店長、西日本営業本部長・執行役員、店舗事業本部長・取締役を経て、2008年に代表取締役社長CEOに就任。2023年より現職。

1969年の創業以来、ものを長く大切にするフィロソフィーを掲げ、ライフスタイル業界を牽引してきた株式会社アクタスの取締役会長、休山昭氏。インドに12年間駐在し、ORGANIC FIELDの根幹を担ってきたORGANIC FIELD室 髙森俊滋。
インドの綿花畑をともに訪れた二人が、ものづくり の原点と、暮らしの先にある持続可能な未来について語りました。
髙森アクタスは1969年の創業以来、「美しく丁寧な暮らし」やものを大切にするフィロソフィーを掲げ、時代に先駆けてサステナビリティに取り組んでこられました。まずはじめに、創業から受け継がれてきた思想やこれまでの歩みについて教えていただけますか。
休山アクタスが創業した1969年は高度経済成長期にあたり、家電をはじめ「ものを所有し消費すること」が豊かさの象徴とされていた時代でした。しかし当時の創業メンバーは、「豊かなくらしとはただ消費を繰り返すことではなく、作り手の顔が見える製品とできる限り長い時間を過ごすこと」という言葉を残しています。ものを消費して廃棄するのではなく、長く大切に使い続ける「丁寧な暮らし」こそが究極のサステナビリティであるという考え方は、今もアクタスのDNAとして受け継がれています。
髙森消費の時代にその考えを持たれ、今なお脈々と受け継がれているのは素晴らしいですね。
休山当社のルーツに根付いているのだと思います。当時、アメリカ文化を広める流れが主流だった中で、アクタスが手本としたのはヨーロッパでした。ヨーロッパの本物の製品を日本に紹介していこうという創業思想があったからこそ、その文化や価値観が自然と社員の中にも息づいているのだと思います。

髙森そうした中で、今回「ORGANIC FIELD(以下、オーガニックフィールド)」に賛同し、採用を決めていただいた決め手は何だったのでしょうか。
休山2024年にインドの綿花畑を訪問した際、スタイレムの皆さんが自社の損益を超えて、「今、何をするべきか」という強い責任感を持って取り組まれている姿を拝見したことです。正直、最初はどのように向き合われているのか注視していた部分もありましたが、現場で真剣かつ地道に取り組まれている姿に深く感銘を受け、「同じ思想を持っている」と心から共感することができました。
髙森会長ご自身にインドまで足を運んでいただき、現場をご覧いただけたことは本当に嬉しかったです。
現地で最も印象に残ったことは何でしたか?
休山訪問前は「なぜこれほどの人口大国でありながら近代化が緩やかなのだろう」という疑問がありました。実際に現地を訪れ、大きな岩に服を叩きつけて洗う姿や、手作業での綿花栽培を見て、「機械を入れればもっと楽になるのではないか」と最初は思いました。
しかし、現地で人々の暮らしを見ていると、それだけではないことに気がつきました。就業人口の4割以上が一次産業に従事しているインドにおいて、彼らの仕事を奪うことなく、収入や生活をより良くしていく。そのためにスタイレムは、オーガニック農法への移行支援を行っている。その姿勢は、現地の人々を尊重し、暮らしに寄り添った非常に深い取り組みだと実感しました。
髙森私自身もインドで長く生活する中で、「農家の方々にとって本当に必要なものは何か」をずっと考えてきました。私たちの考えるサステナビリティを一方的に押し付けるのではなく、土壌を整え、綿花の価値を高めるお手伝いをする。それこそが彼らの自立と幸せにつながると信じて取り組んでいます。
休山皆さんが本当に生き生きとしていて、自らの仕事に誇りを持って一生懸命に働いている姿がとても印象的でした。
また、農家の方々からオーガニック農法への転換によって農薬による健康被害が減り、生活の質が向上しているというお話も伺い、経済支援にとどまらない本質的な価値を感じましたね。

髙森オーガニックフィールドも今年で6年目を迎え、土壌の改善とともに多様な循環が生まれています。虫よけや土壌の栄養バランスを整えるため、コットンの隣では大豆やトウモロコシなどの食糧も栽培しています。それらも農薬を使わず育てることで、農家の方々の健康状態が改善し、医療費の削減や収入の増加につながっているそうです。
さらに畑の周りの草を食べる牛にも変化があり、「牛乳の量と質が変わった」と農家の方が教えてくれました。コットンだけではなく、土壌や食糧、人々の健康、家畜、そして子どもたちの暮らしまでがつながっているのではないか。それを農家の方々自身が生活のなかで感じてくれていることが、本当に嬉しいですね。
休山すべてが自然のなかでつながっている。生産現場へ直接足を運ばなければ決して実感できなかったことだと思います。
髙森今回、商品展開の第一弾としてタオルを選ばれました。その理由やこだわられたポイントがあれば教えてください。
休山理由は2つあります。
1つ目は、毎日肌に直接触れるからこそ「タオルは絶対に上質で良いものを開発する」というのがアクタスの昔からのこだわりだからです。それをオーガニックフィールドの素材で体現したかった。
2つ目は、機能性への驚きです。私自身、環境に配慮した商品は使い心地をある程度我慢しなければいけないというイメージがありました。しかしサンプルを実際に使ってみると、肌触りと吸水性の良さに驚きました。環境に配慮しているのに、使い心地も良い。自信を持って「良いもの」だと言える品質だったからこそ、採用を決めました。さらに開発チームの工夫により、女性が頭に巻いても重くなく、乾きやすい厚さにもこだわりました。僕自身も今も愛用しています。
髙森このタオルには、オーガニック農法への転換期に収穫される「コットン・イン・コンバージョン(移行期コットン)」をご使用いただきました。
休山オーガニック認証を得るまでの移行期間は、収量が減ったり、綿花を適正な価格で販売できなかったりと、農家に大きな経済的負担がかかります。この障壁となる期間に収穫されるコットンを、スタイレムが全量買い取ることで農家を支える仕組みは極めて画期的だと思いました。
そして私たちのような小売業が、製品の販売を通じてその移行期を「出口」から支えることには、とても大きな意味があると思っています。
髙森一方で、「環境配慮」を前面に押し出しすぎると商品自体の魅力が伝わりにくくなるというジレンマもあります。この点はどう捉えられていますか?
休山私は、環境に配慮しながらも、アクタスが提案する以上はスタイリッシュでなければいけないと思っています。まず「素敵だな」「欲しいな」と感じてもらう。そしてその商品を知っていく中で、実は環境や生産者にも配慮して作られていることに気づいてもらう。
それがきっかけとなり、その人の意識が少し変わる。そういう順番でいいと思うんです。大きなパネルで仰々しく表現するより、それぞれのスタッフが想いを持ち、お客さまとの会話の中で自然に伝えていく。その方がより深く届くのではないでしょうか。
髙森サステナビリティを販売の手段にするのではなく、まず商品としての価値を高め、その背景に企業としての姿勢がある。我々にとっても大切にしていきたい考え方です。
髙森近年、ファッション業界でも原材料のストーリーを伝える機会が増えていますが、インテリアやライフスタイル業界において、お客さまの「素材の背景」に対する関心はどのように変化していると感じられますか?
休山家具の川上にある森林では、無計画な不法伐採が生態系の破壊や砂漠化を引き起こす一因となっています。そのためアクタスでは、計画管理された「FSC認証」などの木材調達を取引基準として徹底しています。また、不用家具のリサイクルにも注力しています。かつては廃棄業者に委託していましたが、不法投棄のリスクを排除しきれない現状を知り、現在はすべてを自社倉庫に集め、手作業で分解・分別を行っています。このリサイクル運用にあたっては、お客さまにもコストの一部をご負担いただいていますが、背景を丁寧にご説明すると皆さま納得してくださいます。環境や社会課題に対するお客さまの意識の高まりを実感していますね。
髙森ごまかしのないサステナビリティの姿勢が、しっかりとお客さまに伝わっている証拠ですね。
休山家具業界はリサイクルに関する法的規制がまだ十分ではないからこそ、自分たちで襟を正して取り組む必要があるんです。手間もコストもかかりますが、こうした企業姿勢が社員のロイヤリティを高め、お客さまからの共感にもつながっていくのだと思います。
髙森ファッション業界では、複合素材による機能性向上や消費の回転が重視されがちで、リサイクル性や素材のルーツにまで配慮したモノづくりはまだ発展途上にあります。機能性と環境配慮のバランスは非常に難しいテーマですが、時代に合わせた最適な選択肢を模索していく必要があると感じます。


髙森インド訪問から商品の発売までを経て、社内やご自身の中でどのような変化がありましたか?
休山インドへ行き、私自身の人生観が変わりました。活動する人たちの情熱や、畑で働く人たちの輝く眼差しを実際に見ることで、製品の表面的な情報だけでなく、その背景までお客さまに伝えていく大切さを痛感しました。今後は、より多くの社員に現場を体験させたいです。
髙森現場の空気感に触れることは、モノづくりの原点を理解し、自社へのロイヤリティを高める上でも非常に大切ですね。アクタスのような素晴らしいパートナーとともにこの循環を広げていけることを大変心強く感じています。
今後、ともに実現していきたい展望はありますか?
休山今回初めて原材料の生産現場を訪れ、川上から川下までが一本につながった感覚がありました。これだけ「良いもの」を作り、農家の方々を支援する取り組みをスタイレムが続けている。だから今度は、私たちが製品を適正な価格で仕入れ、販売し、販路を広げていくことで貢献していく番だと思っています。
これからも川上から川下までしっかりと手を携え、持続可能な未来に向けた提案をともに広げていきましょう。
髙森一つのことをきっかけに、土壌、作物、人、動物、そしてその先の暮らしまで、さまざまなものが循環していく。それこそが、私たちが目指すサステナビリティなのだと思います。
この循環の輪を、スタイレムだけで完結させるのではなく、アクタスをはじめ、想いに共感してくださる皆さまとともに広げていきたいですね。

株式会社アクタス
取締役会長
1961年生まれ。神戸市出身。
1985年株式会社アクタス入社し、神戸・六甲店店長、西日本営業本部長・執行役員、店舗事業本部長・取締役を経て、2008年に代表取締役社長CEOに就任。2023年より現職。

スタイレム株式会社
ORGANIC FIELD室 室長
1976年生まれ、大阪出身。
1999年、瀧定大阪(現・スタイレム)に入社。13年間にわたり、日本国内を中心にテキスタイル事業の営業に従事。2012年のインド現地法人設立を機に現地駐在を開始し、2017年に同法人の代表取締役社長に就任。2024年より現職。